年次大会

第23回大会のお知らせ

開催日時:2023年11月26日()11:00〜18:00
場所:京都大学大学院人間・環境学研究科棟3F 333教室
参加費:無料
ZOOMを利用したハイブリッド形式)

プログラム
1.  研究発表 11:00~11:45(発表時間30分 質疑応答15分)
(ZOOMによるオンライン参加も可。リンクはこちらです)
La psychothérapie institutionnelleの治療論
実践から出発するテクスト読解の試論 転移,移行,要求の迂回
橋本和樹氏(パリ第8大学)

 本発表の目的は、筆者の臨床経験をもとしたジャン・ウリのテクストの読解から、la psychothérapie institutionnelle(P.I.)の治療論の一端を明らかにすることである。
 フランソワ・トスケィエスやウリの実践を治療的な観点から見たとき、そこで目指されるものは精神病の転移の再備給であったということができる。
 トスケィエスは、精神病の実存のあり方を「超越の虚脱」と呼んだ。そのとき、しばしば見られる症状として世界没落体験がある。フロイトは、世界没落体験のメカニズムを「主観的世界からの愛情の撤収」によるものだと考えた。このメカニズムを踏まえると、隔離治療された患者にとって、自身が新たな〈世界〉のメシアとなるのは当然の帰結とも言える。
 このフロイトの分析と自身の臨床経験からトスケィエスは、神経症などで見られるのとは異なる精神病の転移の在り方を発見する。これが、ウリが後に「分裂した転移」と呼ぶようになるものである。このような転移を再備給するためには、施設のなかに雰囲気の異なる様々な活動や場所が必要である。このとき一つの施設は、治療機能をもった複数の制度として捉え直されなければならない。
 次に治療の鍵となるのが、移行という概念である。P.I.において、一つの制度から別の制度への移行が重要とされる。この移行の例をウリは、ラカンの「四つのディスクール」を用いて解釈している。治療者は、制度のなかで患者と時間を共にしながら、彼らの要求を引き出す。その要求は主人のディスクールの形をとり、しばしば患者はそのディスクールから身動きがどれなくなっている。そこで治療者は、分析家のディスクールを用いて主体を欲望へと近づけていく。制度や活動を通して、患者の要求を迂回させるのである。
 本来の精神分析では、分析家と分析主体の間の媒介物として言語が用いられる。しかし精神病の場合、この媒介となる言語が障害されている。そのためP.I.では、作業という経験的な水準を媒介にしながら、超越論的水準へのアプローチが目指されるのである。

司会:上尾真道理事(広島市立大学)

2.昼休み 11:45~13:15
*この時間に理事会が開催されますので、理事の皆様はご参集下さい。

3.  総会 13:15~13:45
①議長選出

②会務報告 論集刊行に関する報告など
③決算(2022/2023年度)審議
④予算(2023/2024年度)審議
⑤次年度活動計画について

4.大会シンポジウム 14:00~18:00
テーマ:自閉症をめぐって
(ZOOMによるオンライン参加も可。リンクはこちらです)
共催:
16回京都大学国際メンタルヘルスセミナー
司会:松本卓也理事(京都大学)
使用言語:日本語、フランス語(一部発表原稿の日本語訳を配布するとともに、逐次通訳が入る予定です)

 2013年にアメリカ精神医学会(APA)の診断マニュアルの第5版であるDSM-5が出版されて以来、「自閉スペクトラム症(ASD)」という用語が広く知られるようになった。2020年には、フランスにおける小児期と思春期の精神疾患分類が改訂(CFTMEA-R-2020)され、そこには2022年1月に世界保健機関が発表した国際疾病分類の第11版(ICD-11)と同様に、自閉スペクトラム症(ASD)が含まれている。こうして、自閉症スペクトラムが「自閉症スペクトラム」であることには、医学的観点からは議論の余地がないものとなった。
 しかし、当事者たちや精神分析家はまったく異なるアプローチをとる。精神分析の観点から見た自閉症とはいったいどのようなものであろうか? 自閉症と自閉スペクトラム症はどのように異なるのだろうか? 自閉症がひとつの構造であることを支持する議論にはどんなものがあるだろうか? 自閉症という構造があるとすれば、それでもなおスペクトラムについて語ることができるのだろうか? もしそれが可能だとすれば、それはいかなる条件の下で可能なのだろうか?
 日本ラカン協会は、自閉症というあり方や、精神分析による治療可能性をより深く理解するために、2023年にアラン・ヴァニエ(Alain Vanier)氏を招聘する。ヴァニエ氏は、精神科医、精神分析医であり、パリ第7大学教授やEspace Analytiqueの会長を務めたことがある。モード・マノーニやロベール・ルフォールが勤務していたボヌーイ実験校は、自閉症の子どもたちと共に数十年にわたって集団的かつ特異的な経験の場となった。ヴァニエ氏はその証人となった。今回の彼の講演は「自閉症児の治療に基づくいくつかの仮説」と題するものである。また、ヴァニエ氏のカンファレンスに先立って、池田真典氏による自閉症のケアにおける複数的な転移について、タジャン氏による「自閉症の差異」についての議論が行われる。

提題:
Les transferts multiples dans les soins de l’autisme
池田真典 (別府大学)

Apports et limites de “la Différence autistique”
ニコラ・タジャン (京都大学)

Quelques hypothèses à partir de traitements d’enfants autistes
アラン・ヴァニエ

 

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