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第23回ワークショップ
日本ラカン協
会第23回ワークショップ
「精神病における〈父〉
の諸相」
日時: 2017年7月23日(日)
14:00〜18:00
場所:専
修大学神田校舎7号館774教室
(〒101-8425 東京都千代
田区神田神保
町3-8)
参加費:無料
司会: 小林芳樹
提題者:大塚公一郎(自治医科大学看護学
部)
「慢性統合失調症におけ
る生殖・世代
主題」
松本卓也(京都大学大学院人
間・環境学研究
科)
「ヘルダーリンの精神病
と現代思想」
今年の年間活動テーマである「今日のエディ
プス」を考え
るにあたっては、フロイトとラカンが〈父〉に対して与えてきた位置づけを確認し、今日における〈父〉の変化を見極めることが必要である。本ワークショップ
では、とくに精神病における〈父〉の問題を再考することによって、「今日のエディプス」を考える端緒をひらきたい。
フロイトは、精神病(パラノイア)患者で
あった症例シュ
レーバーを検討するなかで、フレックシヒ教授―妻―シュレーバーの3人が、父―母―子というエディプスコンプレクスの図式から理解しうることを指摘し、さ
らに論文「自伝的に記述されたパラノイア(妄想性痴呆)の一症例に関する精神分析的考察」のなかでも「父コンプレクス(Vaterkomplex)」とい
う概念を提示している。だが、フロイトはあたかも〈父〉から目をそらすかのように、パラノイアの病理を同性愛の議論へと還元してしまう。ラカンがセミネー
ル『精神病』や、論文「精神病のあらゆる可能な治療に対する前提的問題について」のなかで、「父である(être
père)」というシニフィアンの排除や、「〈父の名〉(le
Nom-du-Père)」の排除を精神病の構造的条件として強調したのは、フロイトにおいて明確に論じられなかった精神病における〈父〉をあらためて主
題的に取り扱うためであったといえる。
近年、精神病(特に統合失調症)の軽症化や
病理の希薄化
が指摘されるなかで、ラカン派のなかでも「普通精神病(psychose
ordinaire)」といった作業的概念が提示されるなど、古典的な〈父の名〉の排除とその帰結という理論では取り扱いづらい精神病が問題とされるよう
になった。しかし他方で、今日でも精神病のなかに〈父〉が明確に現れている事例も依然として観察される。
このような時代において、私たちは精神病に
おける〈父〉
をどのように考えることができるだろうか? 本ワークショップでは、精神病における〈父〉の問題が家系・生殖といった主題として明確に現れた現代の症例
や、19世紀初頭の精神病者であったヘルダーリンについて書かれた種々の論考を扱いながら、精神病における〈父〉の諸相を明らかにしていきたい。
提題
統合失調症における生殖・世代主題と「女性―
への―推進」
大塚 公一郎(自治医科大学看護学部)
統合失調症の患者やそのリスクをもつ人にとっ
て自己の起源
や父性の問題が、主体としての存立を危機にさらす緊急の問いとなることが時に観察される。われわれは、先にこのような問いが生じてくる主題系を生殖・世代
主題と呼ぶことを提唱した(大塚ら2012)。今回の発表では、その際提示した慢性の一男性症例における家族関係の反転・変質をともなった特異な妄想寓話
と他のとどまるところを知らない産出性の病的体験の分析をとおして、精神病における〈父〉の問題を検討してみたい。その際に、シュレーバー症例に範をみる
ラカンのいう精神病の構造的条件としての「〈父の名〉(le
Nom-du-Père)」の排除や発病後の再建の企てとしての「妄想性隠喩」、さらに、その後、他の論者により発展させられた「女性―への―推進(Le
pousse-à-la-femme)」などの論点を参照してみたい。
ヘルダーリンの精神病と現代思想
松本卓也(京都大学大学院人間・環境学研究
科)
狂気の詩人ヘルダーリンについては、すでに数
多くの病跡学
的研究がなされている。それらの研究の多くは、およそ1801-2年に彼の精神病(統合失調症)が発病したとみている。そして、ランゲ=アイヒバウムが彼
のその時期の精神病に知的解体(詩の言語の崩れ)しか見ないのに対して、ヤスパースは同じ時期に「形而上学的な深淵の啓示」を読み取り、ハイデガーはその
深淵に引き寄せられるようにして思索を行った。他方、ラカンとイポリットの指導を受けジャン・ドレーの下に提出されたラプランシュの博士論文『ヘルダーリ
ンと父の問題』は、1794-1800年という発病前の時期のヘルダーリンがシラーをめぐって取った一連の態度のなかに、精神病の発病の論理を読みとって
いく。そこには、ラカンの〈Un-père〉という謎めいた概念の見事なイラストレーションがみられる。本発表では、さまざまなヘルダーリン論を確認しな
がら、精神病における〈父〉の論理とその展開を見ていきたい。
以上
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