日本ラカン協
会第21回ワークショップ
4(+1)つのディスクー
ル:その読解と応用
日時:2016年7月24日(日) 14:00〜18:00
場所:専修大学神田校舎7号館774教室
(〒101-8425 東京都千代田区神田神保町3-8)
参加費:無料
趣意文
若森栄樹(獨協大学)
今年の夏のワークショップでは、1969年から1970年にかけて行われたセミネール「精神分析の裏面」を取り上げます。よく知られているように、この
セミネールでは、いわゆる4つの言説、つまり「ヒステリーの言説」、「主人の言説」、「大学の言説」そして「精神分析的言説」が主題となっているのです
が、私たちはこのテーマの重要性をまだ十分に理解しているとは言えません。第一に、ここでいう「言説」とはなんでしょうか?これを常識的に捉えると完全に
誤解することになります。「言説」といっても、それは「言葉なき言説(le discours sans
parole)」であり、言葉として現れることがない沈黙した「言説」なのです。
第二に、ラカンは分析家として最初期から――この点でラカンはプラトンと同じ問題の立て方をしているのですが(『饗宴』参照)――睡眠時の思考と覚醒時
の思考のあいだに本質的な違いはないと考えていたし、いわゆる「集団の心理学」と個人の心理学にも違いはないと考えていました。ということはいわゆる「現
実」、あるいは「社会」と呼ばれるものも、精神分析によってしか厳密にアプローチすることはできない、ということになります。
現在ヨーロッパでは、EUからのイギリスの離脱が大きな問題になっていますし、日本でも、現政権のもとで戦後日本の枠組みがおおきく変えられようとして
います。こうした中で変貌しつつある「主体」のあり方を我々はどう捉えればよいのか。これが私たちに解決が求められている、とても大きな問題だと思いま
す。このワークショップは、こうした問題、および、それと関連して、日々眼に見える形であらわになってきている様々な具体的問題(臨床的であるにせよ、な
いにせよ)にアプローチするための予備的考察として、たぶん位置付けることができるでしょう。
4(+1)つのディスクール:その読解と応用
14 :00-14 :35
司会者によるイントロダクション
若森栄樹(獨協大学)
14 :40-15 :30
現代精神分析的思想における「ディスクールの
理論」
提題者:ニコラ・タジャン(京都大学人文科学
研究所)
ラカンの「ディスクール(言説)の理論」を自由に紹介した後、「精神分析的ディスクール」と「資本主義のディスクール」にフォーカスをあてていく。ラカ
ン以外にも、現在活躍している精神分析家の思想を参照する予定であり、例えば、クリスチャン・フィエレンス、マリ=ジャン・ソレ、ピエール・ブリュノも取
り上げる。特にフーコーの理論のパースペクティブを絡めることで、4(+1)つのディスクールは人文社会科学研究に対して有益である。
休憩
15 :50-16 :40
「四つのディスクール」論の哲学、試論
提題者: 荒谷大輔(江戸川大学)
ラカンにおける主人のディスクールがヘーゲルの主人と奴隷の弁証法を基盤としていることは知られているが、そこから展開される四つのディスクールそれぞ
れの哲学的な議論の射程については、まだ研究しつくされてはないと思われる。
本稿は、まさにヘーゲルの時代に広まった現行の大学システムと資本主義制度の並行性を論じたと思われる「大学人のディスクール」と、その時代における新
たな主人としての「資本家のディスクール」を中心として、四つのディスクール論の哲学的な可能性を論じたい。
各提題のあとに質疑応答の機会を設け、最後に提題者およびフロアの間での議論の時間をとる予定です。
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