第17回ワークショップ

 
 日時: 2014年7月27日(日)13時30分〜17時30分
 
場所:専修大学神田校舎7号館784教室
  (〒101-8425 東京都千代田区神田神保町3-8)
    参加費:無料

 タイトル: 「転移」概念へのアプローチ

 一昨年より協会では、ワークショップと大会シンポジウムに関して、一つの共通テーマを設定し議論を重ねることでその深化をはかるというかたちを試みてい ます。一昨年の「死の欲動」、昨年の「不安」に続いて、今年は「転移」の問題を取り上げることになりました。 

 ラカンのセミネールを時系列上に並べたとき、「転移」は「精神分析の倫理」と「不安」の中間に位置しており、対象aの概念生成の契機となる考察が散見さ れます。なかでも、プラトンの『響宴』のなかで議論されていた「アガルマ」概念は非常に重要であるにもかかわらず、これまで日本のラカン研究では正面から 扱われてこなかったといえます。

 今回のワークショップでは、秋(10月)のワークショップ・12月の大会シンポジウムを控え、ラカンの「転移」概念を臨床面からも考えるに際して必要と なる二つの方向―ラカンの「転移」概念の変遷と、セミネール「転移」におけるその彫琢―からのお話をうかがった上で、「転移」概念の理論的基盤の確認をし てゆきたいと思います。

 司会    : 伊吹克己(専修大学)

 提題者 : 小長野航太(専修大学)

      ラカンにおける転移概念の変遷と神経症の構造


提題梗概:あ る症状の原因を器質的なものに探ろうとするとき、医者との関係が根本的な問題となることはまずないだろう。たとえば、風邪をひき咳がとまらなくなったた め、医者に診てもらうようなとき、その医者とのやりとりが症状にかんしてかかわってくることはない。しかし、その咳の原因が、ドラのようにヒステリー性の ものであると考えられるなら、症状にかんして分析家との関係が関与してくる。なぜなら、神経症の構造の本質に、分析家との関係がかかわることになるからで ある。
 フロイトは、このことをいち早く察知し、転移と呼び、精神分析において考察すべきもののひとつとして提出した。フロイトは、転移を抵抗と反復の観点から 考察している。
 ラカンは、セミネール11巻で、無意識、反復、欲動とともに、転移を、精神分析における重要なテーマとして取り上げた。しかし、そこでの考察は、かつて セミネール1巻でおこなったものとは、かなり違っている。
 その変化は、ラカンによる神経症の構造の理論化の展開に対応しているように思われる。その展開はどうじに、分析の終結をどのように考えるかということと もかかわっている。セミネール1巻では、想像界と象徴界によって神経症の構造が理論化され、そこで転移は想像的なものと象徴的なものによって区別されるの みであった。しかし、シニフィアン概念の練り上げと、それとのかかわりからなされた欲望にかんする考察を経ることによって、セミネール11巻では転移にか んして、より複雑な議論がなされている。
 今回のワークショップでは、おもに、セミネール1巻と11巻を取り上げながら、転移概念の変化にかんして、ラカンにおける神経症の構造の理論化の練り上 げをたどることで明らかにしたい。


 提題者 : 河野一紀(京都大学)

      『饗宴』のラカン的読解
        ―〈もの〉と対象a の中間項としてのアガルマ

提題梗概:転 移は精神分析実践が可能となるために不可欠な条件であるが、その理解や取り扱いは学派によって大きく異なっている。『転移』のセミネールにおいてラカン は、現実的なものを精神分析に導入していくなかで、想像的なものや象徴的なものに基づいたそれまでの転移概念の練り直しを試みた。とりわけ、『饗宴』の読 解で取り上げられたアガルマという語は、対象aの概念生成へと至るなかでの重要な位置を占めていた。本発表では、ラカンによる『饗宴』の読解を整理しつ つ、転移との関連におけるアガルマの理論的意義について検討したい。


各提題発表(40分)のあとに質疑応答の機会(20分)を設け、最後に提題者およびフロアの間 での議論の時間をとる予定です。 
    以 上