第9回大会

日本ラカン協会第9回大会報告

 2009年12月6日、本協会第9回大会及び総会が専修大学神田校舎において開催されました。

 午前 9時から研究発表が開始され、石崎 恵子 会員(お茶の水女子大学大学院博士課程)による「精神分析における『絶対的差異』――西田哲学との対比において」〔司会:伊吹 克己 会員(専修大学)〕、太田 和彦 会員(東京農工大学農学府)による「宮澤賢治と『師』の機能――『セミネールU:自我』を中心に――」[司会:福田 肇 会員(フランス・レンヌ第一大学哲学科博士課程)]、柵瀬 宏平 会員(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)による「ラカンによる『ハムレット』読解をめぐって」〔司会:原 和之 会員(東京大学)〕という、以上三つの研究報告が行われました。

 次に、昼休みを挟み、午後1時から会員総会がおこなわれました。

 会員総会においては、原事務局長による会務報告(刊行の遅れている論集第8号編集の進行状況、次年度の活動予定など)が行われ、予決算が承認されました (別紙参照)。次年度については、主として、協会設立10周年を記念し、それに見合う企画を、現在、理事会にて検討中であることが報告されました。

 午後2時からはシンポジウム〈 「いじめ」が終わるとき−変動する社会と精神分析 〉が開催されました。会員および会員外の多数の参加者が詰めかける中、芹沢 俊介 氏(評論家)による「いじめの定義とその力動」、川崎 惣一 会員(北海道教育大学)による「いじめの構造分析  中間集団における享楽」、赤坂 和哉 会員(臨床心理士)による「いじめの幻想的側面について」という三つの報告が行われ、その後、磯村 大 会員(地精会 金杉クリニック)を司会とし、活発な議論が交わされました。
 


 シンポジウム終了後は、会場近くのダイニングカフェ「エスペリア」において懇親会が開催され、約20名の会員が出席し、盛会のうちに終了しました。

 なお、大会当日は午後1時から役員選挙の開票が行われ、理事・会計監査として、以下8名が選出されました。

理 事(五十音順):
     石澤 誠一・磯村 大・伊吹 克己・原 和之
     福田 肇・保科 正章・若森 栄樹
会計監査:川崎 惣一

 役員選挙後に初めて開催された理事会において、若森 栄樹 理事を理事長に、原 和之 理事を事務局長とすることが決定されました。また、市村 卓彦  会員・福田 大輔 会員が委嘱理事として理事会に加わることも決まりました。これによって理事会・会計監査の構成は以下のようになります。

理事会(五十音順):
      石澤 誠一・市村 卓彦・磯村 大・伊吹 克己・原 和之(事務局長)
      福田 大輔・福田 肇・保科 正章・若森 栄樹(理事長)

会計監査:川崎 惣一



日本ラカン協会第9回大会プログラム

 日時:2009年12月6日(日) 09:00〜17:30
 場所:専 修大学神田校舎7号館731教室(3F)
     (〒101-8425 東京都千代田区神田神保 町3-8)
 交通: 営団地下鉄・神保町駅 徒歩3分
 大会参加費 : 無料

   ◎12月6日(日)
 
 1. 研究発表 09:00〜11:45  (発表時間30分、質疑応答15分)

 09:00-09:45  石崎 恵子 (お茶の水女子大学大学院博士課程)
「精神分析における『絶対的差異』――西田哲学との対比において」
司会: 伊吹 克己(専修大学)
概要:ラカンが精神分析の立場として提示した「絶対的差異を得る欲望」とは、「S /対象a」及び「la Loi/les lois」における差異を求めるものであるが、この差異を別の角度から「一般/個物」「道徳/宗教」の相違として捉えていたと考えられる西田幾多郎の説と の対比において、その分岐点から浮き彫りとなる差異の諸相と、日本におけるその可能性を探りたい。

 10:00-10:45  太田 和彦 (東京農工大学農学府)
「宮澤賢治と『師』の機能――『セミネールU:自我』を中心に――」
司会: 福田 肇(フランス・レンヌ第一大学哲学科博士課程)
概要:詩人・宮澤賢治(1987-1936)の心象スケッチ作品には、ほぼ必ずそれぞれの作成 年月日が記されている。しかし第三集に収録されている作品1020「野の師父」には、例外的に草稿を含めてその作成年月日が記されていない――。これを きっかけとして、賢治の詩作・推敲における「師」の機能を、ラカンが『セミネールU:自我』で行った「教える者への問い」を主に参照しつつ考察する。そし て、〈賢治はなぜ推敲し続けたのか?〉という前回ワークショップからの疑問に、別の視角からの回答を試みる。

 11:00-11:45  柵瀬 宏平 (東京大学大学院総合文化研究科博士課程)
「ラカンによる『ハムレット』読解をめぐって」
司会: 原 和之(東京大学)
概要:シェイクスピアの『ハムレット』は、フロイト以来、精神分析において、エディプス・コン プレックスについて考えるための重要な参照項であった。1959 年、エディプス・コンプレックス概念の再構築という作業をひとまず終えたラカンは、この戯曲の読解に着手する。本発表は、ラカンによる『ハムレット』論を 分析することで、ラカンによるエディプス・コンプレックス再解釈の内実を検討するとともに、この悲劇の読解を通じてラカンが練り上げた「欲望」概念がいか なるものであったかを明らかにすることを企図する。

 2. 昼休み 12:00〜13:00

 3. 総会  13:00〜14:00
@ 議長選出
A 会務報告… 論集刊行に関する報告など
B 決算(2008/2009年度)審議
C 予算(2009/2010年度)審議
D 次年度活動計画について

 4. シンポジウム 14:30〜17:30

〈 「いじめ」が終わるとき−変動する社会と精神分析 〉

企画・司会 : 磯村 大 (地精会 金杉クリニック)

  提題者 : 芹沢 俊介 (評論家)
    「いじめの定義とその力動」

  提題者 : 川崎 惣一 (北海道教育大学)
    「いじめの構造分析  中間集団における享楽」

  提題者 : 赤坂 和哉 (臨床心理士)
    「いじめの幻想的側面について」

      ※…第9回大会シンポジウム資料(PDFファイル109KB)

 5. 懇親会(会費:5,000円) 18:00〜  於 ダ イニングカフェ「エスペリア」